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- 電気を使えばお金がもらえる
2023.10.30
日本では、庶民も企業も、円安の影響もあって電気料金の高騰に苦しんでいる。ところが、「電気を使えばお金がもらえる」ところがある。
一つの例は、デンマークだ。風力発電が電力の60%を越えているデンマークでは、その風力発電の発電量が需要を大幅に超えるタイミングで、電力市場価格がマイナス(ネガティブ価格)になる時間帯がしばしば出現する(図)。
2023年7月2日の西デンマーク電力市場のスポット価格と電力需給
【出典】EMD International https://www.emd-international.com/el/
この時、デンマークの住宅・建築物のおよそ7割をカバーする地域熱供給事業者は、バイオマスや天然ガスのコジェネレーションからの発電量を絞り込み、代わりに電気ボイラーを稼動させる。もちろん、温水を作ることが目的だが、それ以上にネガティブ価格の時に電気ボイラーを動かすと、電気料金が収入になるからだ。電気ボイラーは「儲かる」ため、今やデンマークの地域熱供給では電気ボイラー建設ラッシュだという(写真)。
(筆者撮影)
ボイラーだけでなく、電気自動車(EV)を持つ知人のデンマークの大学教授は、ネガティブ価格の時にEVを充電することでお金を稼げるという。こうした電力市場でのネガティブ価格のお陰で、風力発電やコジェネは発電を抑制し、他方で需要が増えるため、自然変動型再エネ(=風力発電+太陽光発電)が60%を超えるデンマークでも、需給調整が市場を通して行われる仕組みだ。
米国では、テキサス州やカリフォルニア州など一部の州で、テスラが電力会社を展開している(テスラエナジー)。そのテスラエナジーに自宅のテスラ蓄電池を登録することで、電気料金が無料になるどころか、儲かっている例も報告されている。こちらは、数千から数万ものユーザーを束ねて(アグリゲートして)、これらをVPPとして電力市場の需給調整に直接貢献することで、その貢献分を各ユーザーに戻してゆくビジネスモデルだ。
デンマークも米国の例も、いずれも新しい時代のエネルギーのかたちが姿を現しつつあることが実感される。
テスラエナジーとのVPP契約で儲かったユーザー報告例
(@Stambushの2023/9/19のX(Tweet)より)
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