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- 飯田哲也「RE100への途」
- 原発ゼロを達成し再エネ100を目指すドイツ
2023.04.30
飯田哲也 環境エネルギー政策研究所 所長
4月15日、ドイツが公約どおり、最後の原発3基を閉鎖し、原発ゼロを実現した。12年前に日本で起きた福島第一原発事故を受けて、メルケル独首相(当時)が倫理委員会を立ち上げて、事故からわずか4ヶ月後に17基の原発の廃炉を決めたと理解されているが、正確には異なる。
2000年に社会民主党と緑の党から成る当時の連立政権のもとで、電力会社との間で2022年までにすべての原発を閉鎖する「原子力コンセンサス協定」を締結していた。その後、2010年に第2次メルケル政権がこの閉鎖を8〜14年延期するよう協定を見直していた。その直後に福島第一原発事故が発生したため、もとの「原子力コンセンサス協定」に戻したかたちとなっている。
ただし、ロシアのウクライナ侵攻に対して、自らガスや石油・石炭を禁輸したことで、冬のエネルギー危機を回避するために、3基の原発だけは廃炉を3ヶ月延期して、冬の期間はスタンバイさせていたという事情だ。
一方、再エネに関しては、1年前(2022年4月7日)には、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、「再生可能エネルギー100%」の実現を2035年に前倒しする政策を発表し、この1月からそれを実現するための新法EEG2023を施行した。すでにドイツの再エネ比率は、は原発閉鎖後に50%を越え、ますます加速させている。2000年にはわずか7%だったドイツの再エネだが、この加速度的な普及ペースを見ると、再エネ100%を実現することは確実だろう。
他方、自ら福島第一原発事故を引き起こした日本は、今国会で原子力利用に軸足を置く「GX法案」を成立させ、ドイツとは真逆のコースに向かっているように見える。
飯田哲也(いいだてつなり)エネルギー・チェンジメーカー
国内外で有数の自然エネルギー政策のパイオニアかつ社会イノベーター。
京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻修了。
東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。
ルンド大学(スウェーデン)客員研究員、21世紀のための自然エネルギー政策
ネットワーク(REN21)理事世界風力エネルギー協会アドバイザーなど国内外で
自然エネルギーに関わる営利・非営利の様々な機関・ネットワークの要職を務めつつ
国や地方自治体の審議会委員等を歴任。
「北欧のエネルギーデモクラシー」「自然エネルギー政策イノべーション」など著書多数。
1959年山口県生まれ
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