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- RE100を目指すさまざまな取り組みと日本
2020.01.29
狭い意味もしくは固有名詞としての「RE100」は、前回報告したとおり、The Climate Group(注1) と CDP (注2)によるイニシアティブで2014年に始まったキャンペーンだ。他にも、「自然エネルギー100%」を目指す取り組みは、世界中で広がってきている。
一つは、「RE100」とほぼ同時に立ち上がった「Go100%REキャンペーン」がある。現在は、正式な非営利法人としてドイツ政府に登録されて「グローバル100% 自然エネルギープラットホーム」(100%REプラットホーム)と改称し、ボンに本拠を置いて活動している(注3)。
「RE100」が世界的なグローバル企業が中心のビジネス・コミュニティに軸足を置いているのに対して、100%REプラットホームを構成する団体は、地方自治体を組織するイクレイ(注4)や環境NGO、そして風力発電や太陽光発電の組織であり、市民社会とマルチステークホルダーなど多様な拡がりに根ざしている。ちなみに、筆者も理事の一員を務めており、日本でも2018年から展開している(注5)。
そのイクレイも「自然エネルギー100%の都市と地域のネットワーク」を展開している(注6)。米国では、自然エネルギー100%を購入するバイヤーのネットワーク(REBA) (注7)も2017年後半に発足している。
ところで、100%REプラットホームの立上げの議論は、2014年1月に日本で行われたにもかかわらず、「RE100」の取り組みに日本はずいぶんと出遅れた。日本企業の初参加は2017年4月のリコーなので、「RE100」発足から丸3年後でパリ協定(2015年12月)から1年半も後という遅れだ。
なぜそこまで世界の流れに遅れたのか。その背景は、経団連と経産省による「RE100」を禁句とする「箝口令」があったと聞く。なぜなら、「脱炭素」であれば彼らが執着する原発や石炭火力(+炭素回収貯留)が共存できるが、「自然エネルギー100%」となると原発ゼロかつ石炭ゼロを意味するからだ。
これは世界の現実があまりにも見えておらず、時代錯誤というほかない。そこに経団連企業でもあるリコーが足抜けして「アリの一穴」を空けたとたんに、今度は「バスに乗り遅れるな」とばかりに、日本企業が続々と「RE100」に参加し始めたというわけだ。昨秋に参加を表明したソニーとパナソニックを加えると、21社に上る(2020年1月現在)。さらに、本来、グローバル企業が対象の「RE100」の中小企業版を日本で展開したいと模索していたグリーン購入ネットワークは、昨年10月に、イクレイ日本、公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)とともに、「再エネ100宣言 RE Action」を立ち上げている(注8)。
1世界中のビジネスリーダーや政府リーダーと協力して気候変動問題に対処する英国本部の非営利組織
2投資家・企業・ 都市・国家・地域が環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営する英本部の非営利組織
3The Global 100% Renewable Energy Platform, http://www.global100re.org
4持続可能な都市と地域をめざす自治体協議会(ICLEI – Local Governments for Sustainability)。持続可能な都市と地域をめざす地方自治体による国際的な組織, http://www.iclei.org/
5自然エネルギー100%プラットホーム, https://go100re.jp
6100% Renewable Energy Cities and Regions Network, https://iclei.org/en/100RE.html
7The Renewable Energy Buyers Alliance。2017年後半に発足した米国ベースのキャンペーン, https://rebuyers.org
8再エネ100宣言 RE Actionのサイト, https://saiene.jp/
飯田哲也(いいだてつなり)エネルギー・チェンジメーカー
国内外で有数の自然エネルギー政策のパイオニアかつ社会イノベーター。
京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻修了。
東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。
ルンド大学(スウェーデン)客員研究員、21世紀のための自然エネルギー政策
ネットワーク(REN21)理事世界風力エネルギー協会アドバイザーなど国内外で
自然エネルギーに関わる営利・非営利の様々な機関・ネットワークの要職を務めつつ
国や地方自治体の審議会委員等を歴任。
「北欧のエネルギーデモクラシー」「自然エネルギー政策イノべーション」など著書多数。
1959年山口県生。
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