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- 新連載 RE100への途
2019.12.17
昨今、「RE100」というキーワードを見たり聞いたりしたことはないだろうか。再生可能エネルギーの英語Renewable Energyのそれぞれの頭文字REと「100%」を意味する100を繋げて、「再生可能エネルギー100%」を意味するキーワードだ。ただしRE100とは、たんに「再生可能エネルギー100%」ではなく、企業の事業活動をすべて再生可能エネルギーで賄うことを目指す宣言であり、再生可能エネルギー業界や企業の環境社会的貢献(いわゆる「ESG」)の分野では、ある種の「ブーム」になっている。この新連載では、こうしたRE100の取り組みはもちろん、その由来や背景、それを取り巻くさまざまな動きなどを紹介してゆく。
RE100は、2014年9月にニューヨークで開催された「人々の気候行進」(気候変動対策を求める大規模デモで約30万人が参加)を機に、The Climate Group(注2)[1] と CDP (注3)[2]によるイニシアティブとして立ち上がった。RE100では、グローバルに展開する企業を対象として、自社の活動で消費する電力を将来的に自然エネルギー100%に転換するコミットメントを登録する。背景には、The Climate Group や CDP を含む世界のビジネス志向の気候NGOが参加する We Beam Business Coalition が母体となっていること、そして、ビジネスを通じて気候変動・環境問題の解決を促進するIKEA財団が運営資金の一部を提供していることなどがある。
2019年9月時点で、RE100には203の企業が参加している。参加企業は、アップル社、フェイスブック社、グーグル社、IKEA社など、フォーチュン・グローバル500企業を含む多様な分野から参加し、その売上合計は4兆5,000億米ドル(約500兆円)を超える。すでに、グーグル社など使用する電力の100%再生可能エネルギー化を達成した企業の他、アップル社は自社が調達する部品メーカーなどサプライチェイン100%再生可能エネルギー化を求めるなど影響を及ぼしている。こうした企業が結集することで、政策立案者および投資家に対してエネルギー移行を加速させるためのシグナルを送ることを意図している。実際に、RE100が誕生した翌2015年12月にパリで開催された気候変動サミットCOP21でパリ協定が成立する上で、大きな後押しの一つとなったと考えられる。
[1] RE100のサイトより http://there100.org
[2] 世界中のビジネスリーダーや政府リーダーと協力して気候変動問題に対処する英国本部の非営利組織
[3] 投資家・企業・ 都市・国家・地域が環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営する英国本部の非営利組織
実は、RE100の発足と同じ2014年に、先行して「世界自然エネルギー100%キャンペーン」も立ち上がっている。こちらは、多様なステークホルダーが参加するオープンプラットフォームであり、次回以降に紹介することにしよう。
なぜ、こうしたRE100という気運が世界的に盛り上がってきたのか。
何と言っても、再生可能エネルギー、中でも太陽光発電と風力発電のコストが短期間で急落し、それに反比例してそれらの普及が短期間で急拡大してきたという現実がある。風力発電のコストは2009年からの10年で7割減し、普及は121GW(2008年末)から600GW(2018年末)へと5倍増した。太陽光発電のコストは2009年からの10年でなんと9割減し、普及は16GW(2008年末)から511GW(2018年末)へと32倍増している(図2、図3)。
このため、2010年頃には、気候変動対策として「取るに足らない」とほとんど期待されていなかった再生可能エネルギーが、ほんの数年後のRE100が発足した2014年頃には、再生可能エネルギーがほぼ唯一の気候変動対策として期待されるように、企業や政治家の認識が大転換したのだ。
今や、RE100(再生可能エネルギー100%)は、可能であるばかりか、もっともコストが安くリスクも小さい「もっとも現実的な取り組み」なのだから、これを自ら率先することこそが、企業にとっても社会的責任(環境・社会・統治を統合するESGの取り組み)である、という時代に大きく変わったのだ。
飯田哲也(いいだてつなり)エネルギー・チェンジメーカー
国内外で有数の自然エネルギー政策のパイオニアかつ社会イノベーター。
京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻修了。
東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。
ルンド大学(スウェーデン)客員研究員、21世紀のための自然エネルギー政策
ネットワーク(REN21)理事世界風力エネルギー協会アドバイザーなど国内外で
自然エネルギーに関わる営利・非営利の様々な機関・ネットワークの要職を務めつつ
国や地方自治体の審議会委員等を歴任。
「北欧のエネルギーデモクラシー」「自然エネルギー政策イノべーション」など著書多数。
1959年山口県生。
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