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飯田哲也「RE100への途」

自民党総裁選とRE100の行方

2021.09.27

9月29日投開票の自民党総裁選は、日本の今後のRE100実現を左右する、決定的な影響がある。
現在、自民党総裁選に出馬している河野太郎行政改革相(58)岸田文雄前政調会長(64)高市早苗前総務相(60)野田聖子幹事長代行(61)の4名のうち、誰が総裁すなわち首相になるかで、天と地ほどの違いが生じるのだ。

9月18日には日本記者クラブ、23〜24日にはオンライン討論会がそれぞれ4者揃って行われ、そこでは、原発やエネルギーについての議論が交わされた。

岸田氏は、再生可能エネルギーを重視すると述べつつも、核燃料サイクルを堅持しつつ、原発、水素、カーボンリサイクルなどの必要性も訴えた。ほぼ現行の政府(=経産省)の方向性を踏襲した「優等生的な回答」だった。核燃料サイクルによって「核のごみ処分10万年が300年に短縮される」とまで発言したあたりは、完全に経産省の原子力官僚に取り込まれていることが確信された[1]。いうまでもなく、これはデタラメなのだが、経産省のホームページにもこの「デタラメ」が掲載されている[2]。「担ぐ神輿は軽くてパーが良い」とうそぶく官僚には御しやすい総理になることが予想されるが、肝心のその経産省政策が世界から2週遅れなので、岸田氏が総裁になった場合には、日本の再エネは現状のまま停滞する可能性が高い。

予想外に岸田氏を上回る勢いで追うのが高市氏は、地産地消の再生可能エネルギーの重要性も述べつつも、小型原発や核融合の重要性を強調していた[3]。さすが安倍晋三氏肝いりで立候補しただけのことはあって、荒唐無稽でおよそ実現性のない技術に固執するところのバランスが、きわめて悪い。やはり高市氏が総理総裁になっても、再エネは現状のまま停滞する可能性が高い。

野田氏は自ら「選ばれるのは自分以外の誰か」と述べており、そもそも河野太郎氏への票をばらけて決選投票に持ち込むための策略で出たとの噂を聞いており、論評するまでもない。討論会でも、エネルギーミックス・電力安定供給・地熱以外に言葉がなく、そもそもエネルギーの知識も関心も無いようだ。

そして河野太郎氏。昨年1年間、再エネ規制改革タスクフォースで鋭く切り込んだように、他3候補に対してずば抜けた知識があるだけでなく、日本の遅れを痛感しており、政策だけなく、構造改革を行う意欲がある。ただし1つ気になるのは、この1年間の再エネ規制改革タスクフォースの活躍は、霞ヶ関、とくに経産省では疎んじられており、仮に河野太郎氏が総理総裁に選ばれなかった場合には、その反動で、逆に再エネ規制改革が大きく逆戻りする恐れさえある。

9月29日に、河野太郎氏が自民党総裁、すなわち日本の首相に選ばれるか、それとも他の誰かになるか、日本の再エネや脱炭素の未来にとって、大きな岐路にあたる。

[1] 毎日新聞「自民党岸田氏「核のごみ処分10万年が300年に」は本当か」2021年9月24日 https://mainichi.jp/premier/business/articles/20210924/biz/00m/020/007000c
[2] 経済産業省「もんじゅ廃炉計画と核燃料サイクルのこれから」 2018年4月18日
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/monju.html

[3] 毎日新聞「高市・岸田氏なぜ「小型原発と核融合炉」主張するのか」2021年9月25日 https://mainichi.jp/premier/business/articles/20210924/biz/00m/020/021000c

 



飯田哲也(いいだてつなり)エネルギー・チェンジメーカー 
国内外で有数の自然エネルギー政策のパイオニアかつ社会イノベーター。
京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻修了。
東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。
ルンド大学(スウェーデン)客員研究員、21世紀のための自然エネルギー政策
ネットワーク(REN21)理事世界風力エネルギー協会アドバイザーなど国内外で
自然エネルギーに関わる営利・非営利の様々な機関・ネットワークの要職を務めつつ
国や地方自治体の審議会委員等を歴任。
「北欧のエネルギーデモクラシー」「自然エネルギー政策イノべーション」など著書多数。
1959年山口県生まれ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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