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飯田哲也「RE100への途」

アップルが突破した日本の「RE100」

2020.02.29

前回、「箝口令」が敷かれていた日本のRE100に、リコーが「蟻の一穴」を空けたのは伝えたとおりだ。そして、最初に日本でRE100を達成したのは、アップル社だった。日本経済新聞が「アップルが再エネ100% 最後の難関、日本も達成」と昨(2019)年9月9日に詳報している[1]

 

以下、概要を簡単に説明しよう。アップル社のグローバルな再生可能エネルギーの調達基準は、(1)再エネ電源の自社保有、(2)再エネ電源への投資、(3)再エネ電力の長期売買契約 の3つから成る。本来ならこの調達基準を日本でも満たすことは何の問題もないはずだが、なぜ「最後の難関」となったのか。それは、日本の再エネに関する制度設計が世界と異なっている、いわば「ガラパゴス」であることによる。
日本が「最後の難関」となった障害は、再エネの価値にある。再エネの価値には、二酸化炭素削減や大気汚染等他の環境保全価値に加えて、特定産地価値や特定電源価値あるいは純国産エネルギー価値など環境価値以外も内包されている。そのため、欧米では、再エネ電源の原産地を証明する制度が1990年代から整備されてきた。後発で再エネ普及を進めてきたアジア等の国々でも、そうした基準を準用してきたので、アップル社は自社の調達基準で、日本を除くどこの国でも問題なくRE100を達成できている。

 

ところが日本で2011年に成立したFIT法(固定価格買取制度)では、FIT法によって生まれる再エネの価値を「非化石価値」と名付け、それが再エネ発電事業者ではなく、FITの賦課金を負担する国民に属すると整理したことが、最初のボタンの掛け違いとなった。そのため、FITの価値は電力の中に一様に溶け込む、奇妙な制度となってしまった。
その結果、FIT電力を買っても、それが再エネであるとか、二酸化炭素を削減できるといった主張ができない、なんとも奇妙奇天烈な制度設計となったのだ。これがアップル社にとって日本が「最後の難関」となった理由である。アップル社は、最終的に日本では必要な太陽光発電を行ってこれを購入するとともに、同じく日本型の二酸化炭素削減証書であるJクレジットと抱合せという「2重調達」をすることで、グローバルなRE100基準を満たすこととなった。

 

現在では、非化石価値証書の取引市場で非化石証書を調達し、そしてそれがどこの再エネ発電に由来するかをブロックチェインを用いてトラッキングすることで、グローバルなRE100基準を満たすことができるそうだが、制度設計の最初のボタンの掛け違いを正せば、きわめて簡単にできることをわざわざ複雑怪奇にしていると言わざるを得ない。
こうして、RE100もまた、日本型ガラパゴスなのであった。

 

1日本経済新聞2019年9月9日「アップルが再エネ100% 最後の難関、日本も達成」
 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48711070Z10C19A8000000/

 

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飯田哲也(いいだてつなり)エネルギー・チェンジメーカー 

国内外で有数の自然エネルギー政策のパイオニアかつ社会イノベーター。
京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻修了。
東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。
ルンド大学(スウェーデン)客員研究員、21世紀のための自然エネルギー政策
ネットワーク(REN21)理事世界風力エネルギー協会アドバイザーなど国内外で
自然エネルギーに関わる営利・非営利の様々な機関・ネットワークの要職を務めつつ
国や地方自治体の審議会委員等を歴任。
「北欧のエネルギーデモクラシー」「自然エネルギー政策イノべーション」など著書多数。
1959年山口県生。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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